2007年05月17日

高崎周辺の里山をゆく vol-6

2007/05/16号ちいきしんぶん掲載

◎『桜山(さくらやま)』標高593m(藤岡市)
ツツジの群生を歩く知られざる名コース
 鬼石町の桜山は、国の天然記念物に指定されている冬桜で知られているが、この時季は約5000本のツツジが山肌を覆い尽くす。金丸登山口から桜山山頂を経て、弁天山までの新緑に萌える尾根歩きを楽しんだ。

■リンゴ畑とミカン園を抜けて
 高崎駅で3番線を探す。「このライン先」の白線を頼りに進むと、2番線の先に突き出した八高線のホームがあった。八高線に乗るのは学生の時以来だから、かれこれ30年ぶりになる。ジーゼル音に揺られながら、早朝の高崎駅を後にした。
 群馬藤岡駅で下車。駅前から日本中央バスの奥多野行きに乗り込む。車では何度も通ったことのある県道前橋長瀞線だが、バスの車窓から眺めるのは初めてである。鬼石総合支所(旧鬼石町役場)で下車し、今度は上信小型バスの上妹ヶ谷行きに乗り換える。30分近い待ち時間があったが、その間に持参した握り飯で朝食をすませた。
 登山口は、金丸バス停を100mほど戻った橋のたもとから始まる。車道から離れ、人家が終わると、神社の赤い鳥居が見えた。今日の安全を祈願して、山道を登り出す。足元一面にチゴユリの可憐な白い花が咲き、時おりムラサキケマンの紅紫色の花が目を楽しませてくれる。
 分岐に出た。直進は「久々沢経由桜山公園1・3km」、左は「桜山公園1・5km(一般向)」とある。思案の末、直進の近道を選んだ。やがてリンゴ畑とミカン園に囲まれた、陽あたりの良い農道へ出た。

■ツツジの花原を泳ぐように進む
 リンゴとミカンが採れるなんて、なんと豊かな土地なのだろうか。張りめぐらされたイノシシ用の電気柵に触れぬよう、リンゴの花の甘い香りの中をのんびりと歩く。ふり返ると、山並みの間から鬼石の町が見下ろせる。視界を南方に移すと、埼玉県境の神山や城峰山の雄姿が……。
 車道が大きくカーブする所で、先ほど分岐した道と合流。その反対側の尾根筋からふたたび、山道へ入る。桜山一帯は公園として整備されているので、山頂までの登山道は何本もある。ここからは地図を頼りに自由にコースを組むと良いだろう。で、僕が選んだコースは、標識もない荒れ道だった。倒木が多く行く手をふさぎ、ヤブがうるさい。木の階段が残っているところを見ると、かつての登山道だったようだ。でも、そこはツツジの群生の中。朱赤色や淡紅色に染まった花の原を泳ぐように歩くのも、格別の楽しみがある。コース判断のミスが招いた、思わぬサプライズであった。
 山道から、ポンと芝生の広場に出た。頂上は近い。目の前には延々と続く木製の階段が……。「山頂まで267段」の標識を横目に、気合を入れて登り始める。ゼイゼイと肩で息を切らしながら、あずま屋の建つ山頂へ。バス停から約1時間30分の登行だった。

■稜線歩きが楽しい弁天山への道
 桜の季節も過ぎ去ったゴールデンウィーク谷間の平日。山頂に人影はない。池や清流を配した日本庭園のある公園駐車場に下っても、みやげ物屋はすべてシャッターを降ろしていて、閑散としていた。「もったいない」と思う。新緑とツツジの桜山を、もっともっと歩いて欲しいものだ。
 駐車場の脇から「ハイキング道入口」の道標に従い、八塩温泉方面を目指して林道を行く。小さな石仏が何体も鎮座している。比較的、新しい物のようだ。ユニークな表情に、心が和む。一旦、車道に出るが、すぐにリンゴ直売所の脇から、また林道へ。
 ここからは、気持ちのよい快適な稜線歩きが思う存分に堪能できる。枝打ちされた明るい杉林の小道、北南に眺望が開けた尾根の道、「ガンバレ坂」「ツツジ坂」「鬼の踊り場」などの名所をめぐり、やがて弁財天が祀られた弁天山山頂の展望台へ出た。364mのピークからは、上毛三山をはじめ埼玉県境の山々まで抜けるような展望が楽しめる。頂上から、ひと下りで弁天山登山口へ着いた。桜山山頂より約2時間の歩程だった。
 桜山温泉センターまでは約1km。もうひと歩きして、いつものように汗を流した後は、湯上がりのビールを楽しむことにした。
(フリーライター/小暮 淳)