2007年03月24日

高崎周辺の里山をゆく vol-4

2007/03/23号ちいきしんぶん掲載


◎「天狗山(てんぐやま)」標高666・8m(甘楽郡甘楽町)
お天狗さまと呼ばれる地元信仰の山
 
 悲しい伝説「菊女物語」が残る宝積寺の東南に位置する天狗山。別名を金光山とも言い、山頂付近に白倉神社の奥宮が祀られていることから、地元では「お天狗山」と呼ばれ信仰されている。平成14年に「ぐんま百名山」に選ばれた。 

■電車とバスを乗り継ぎ登山口へ

 上信電鉄、上州福島駅に降り立つ。小さな駅だが、のどかで人情味のある駅だ。待合室に響く女子高生たちの笑い声まで、素朴に聞こえる。駅前から乗り込んだ那須行きの上信ハイヤーバスも、カラフルなワゴン車で可愛い。約10分で「下轟」バス停に下車。運転手さんのはからいで、少し先の宝積寺の入口で降ろしてもらう。これが田舎のバスのいいところだ。
 宝積寺は立派な寺だが、山門がないことで知られている。その昔、お菊という美しい娘が、この寺に逃げ込んだが山門が開かなかったために追手に捕まり殺されてしまった、という悲しい伝説に基づいている。その後、山門は何度建て替えても火災に遭って消失してしまったらしい。境内には、お菊を祀った観音像が建っている。
 寺の右脇の車道を行く。幅の広い道だが、延々と上りがつづく。やがて舗装が切れて林道となるが、
新道の工事中のようでバラスの道が歩きづらい。旧道との分岐に「菊が池」方面を示す錆びついた古い道標が倒れている。天狗山への案内はまったくなく、少し不安になる。
 林道はそのまま南に下っているが、地図によれば左の道が正しい。ここには標識がないので、注意が必要! 「ぐんま百名山」に選ばれたのだから、一刻も早く登山者への配慮と整備が欲しい。


■鞍部からコブのような山頂へ

 歩き出してから約50分後に、桜公園に着いた。東方に天狗山の尾根筋が見える。正面の道は行き止まりだが、ここからは北方の眺めが素晴らしい。赤城山、子持山、榛名山、遠くに雪を頂いた谷川連峰を見渡す。
 菊が池との分岐で、やっと天狗山への道標が現れた。「お天狗山」と書かれている。地元の人たちの信仰の深さを感じる。いよいよ、登山道が始まる。暗い杉林の中を歩きつづけること20分、またしても道標のない分岐に出た。一見、直進が順当のように見えるが、左に入る道の木々にピンクのリボンが多数付いている。リボンを頼りに進むと、すぐに山頂を示す矢印が現れた。いきなり直登の急坂が始まった。息を切らしつつも、一気に登り詰めると鞍部に出た。細い尾根が左右につづいている。左へ行くと、コブのようにこんもりとふくらんだ小高い所が山頂だった。新旧いくつも山名板が立っている。宝積寺から1時間30分の登行だった。
 周囲は雑木に囲まれているが、冬枯れの枝の間から北西の山々が望める。雪化粧をした浅間山の雄姿が際立っていた。
 先程の分岐にもどり、そのまま鞍部を直進。岩肌の露呈した馬の背状の尾根を、緊張しながら渡った。地形図によれば、この辺りが690mの本当のピークのようだが、地元の人たちは頂上にはこだわらず、この山一帯を「お天狗山」と呼んでいるらしい。


■お天狗さまに見送られて里宮へ
 日だまりを見つけて昼食をとった後、鞍部から東側へ。落ち葉の積もった急斜面を滑るように下りると、巨岩の上に小さいながら立派な社がみえた。白倉神社の奥宮である。神楽殿もあり、赤鳥居の前には狛犬ならぬ対の天狗像が建っている。
 やがて白倉川の源流に出た。ここにも鳥居があり、湧水が祀られている。ここからは、ひたすら石ころだらけの沢歩きとなる。所々歩きづらい箇所もあるが、水音を聞きながらの徒行は楽しいものだ。途中で、岩盤の断層を横に水が流れる奇妙な滝と出会った。右から左へ斜めに落ちる滝というのも珍しい。
 沢は徐々に水量を増して、渓流となり川となる。同時に登山道も川から離れ、舗装された車道となった。ポツリポツリと民家が現れ、山里の風景の中を歩く。振り返ると、天狗山の尾根つづきに藤岡市との境を連なる山脈が見える。やがて上信越自動車道の高架橋をくぐり、本日の終着地、白倉神社の里宮へたどり着いた。山頂からゆっくり下って約2時間の道程だった。ここから甘楽温泉「かんらの湯」は目と鼻の先だ。ひと風呂浴びてから、帰りは上州新屋駅まで、また歩くことにした。
(フリーライター/小暮淳)