2008年04月17日

高崎周辺の里山をゆく vol.11「古城台(こじょうだい)」

2008/4/18号ちいきしんぶん掲載

「古城台(こじょうだい)」標高508m(渋川市村上)
奇岩をめぐる眺望の尾根歩き




 その昔、白井城の支城が置かれていた岩井堂砦から、なだらかな稜線を描く「古城台」。手軽に登れる低山ながら、眺望の尾根歩きと奇岩をめぐるコースは、最後までハイカーを飽きさせない魅力の里山だ。下山後の温泉も楽しみ。

 ▲無人駅から春爛漫の里を抜けて

 高崎駅から電車一本で行ける利便さにかまけて、今回はいつもより遅い出発となった。JR吾妻線「小野上温泉」駅に下車。無人駅だが、駅舎も待合室もきれいで気持ちがいい。それもそのはずで、平成4年に開業した吾妻線で最も新しい駅だ。駅名の由来ともなった小野上温泉センターは、駅のすぐ前にある。
 確か以前は、塩川温泉といっていたはず。昭和56年に、現在の日帰り温泉施設のはしりとも言える宿泊施設を持たない温泉センターが開業。地名の「小野上」を冠に付けたため、温泉名を「小野上温泉」と勘違いする人が多く、ついには温泉地名を「塩川」から「小野上」に変更してしまったという経緯をもつ。なんとも、ややこしい温泉地である。
 駅を出て、線路づたいに田んぼ道を西へ歩き出す。湿った土のにおいは、とても懐かしい香りがする。梅も桜もほころびて、山里は今が春爛漫の装いだ。天気にも恵まれ、最高のハイク日和となった。駅舎の背後に、これから向かう古城台のなだらかな稜線が見える。
 踏切と国道を渡り、赤い鳥居をくぐる。雑木林の中、長い階段を登ると作間神社のある村道に出た。境内には、野仏めぐり1番の道祖神があり、スタンプ台が設置されていた。興味がある人は、温泉センターでスタンプ帳をもらって歩き出すといい。


 ▲箱庭のような山里の風景を一望

 神社にお参りをして、村道を10分ほど行くと、あずま屋の建つ展望舎に着いた。高台からは、ふだん見慣れない北方からの榛名山を望むことができる。左から水沢山、二ツ岳、榛名富士、烏帽子ヶ岳……。前橋、高崎方面から眺める姿との違いに、違和感を感じながらも、その眺望の素晴らしさを満喫した。
 展望舎の前に、登山口はある。杉林の中を登り始めるや、すぐに大きな奇岩が、いくつも出迎えてくれた。ニョキニョキと林立する巨岩群は、さながら妙義山かミニ石林(中国)のよう。所々に大小の洞穴もあり、楽しい山行のスタートに足取りも軽い。
 突然、鉄のハシゴが出現! 「胎内くぐり」と案内板があり、上ってみると大きな洞窟の入口だった。穴の先は抜けていて、石門になっている。中は急坂のため注意が必要。
 コースをもどり、急な階段を息を切らして登りつめると、稜線の尾根道へ出た。やせていて狭いが、眺望は素晴らしい。眼下には岩井堂の岩山をはじめ、いくつもの切り立つ奇岩美を見渡すことができる。
 前方には古城台のシンボル、巨大な天狗岩がそびえている。西側を巻いて、広い尾根へ。山頂は、山道脇のこんもりとしたピーク。意識して探さないと見落としてしまいそうなほど小さな、名刺大の山名板が木に貼ってあった。


 ▲春の野花と野仏をめぐりながら

 昼にはまだ早かったが、東側にある展望台で済ませることにした。ベンチが配されていて、休憩をとるにはもってこいのロケーションである。正面に榛名山を望み、手前には国道や鉄道、段々畑、カラフルな民家の屋根が箱庭のように広がる。これぞ里山からの眺望である。車の往来の音、工場のサイレン、学校のチャイムなどが山頂まで届く、この微妙な里との距離感が楽しい。
 北側へ下り始めると、思わぬサプライズが待っていた。俗に「針の穴」と呼ばれる狭い岩穴くぐりだ。クサリをたよりに体をねじってみるがリュックが邪魔で抜けられない。コース最大の難所か? リュックを先に通し、体を横にして、やっとくぐり抜けた。その後は、杉林の中をゆるやかに下る。やがて舗装道に出た。ほのかに梅の香りがただよっている。北を望むと、小野子山、中ノ岳、十二ヶ岳の山群が指呼の間にせまる。道の端では菜の花が咲き誇り、野仏が微笑んでいる。そのまま昔話の舞台になりそうな、のどかな山里の風景である。
 村道へ出ると左手に、「むしば神」なる奇妙な形をした岩が祀られていた。なんでも、この岩に願をかけると虫歯の痛みがとれるとのことだ。村道を引き返すと、今度は「弘法大師のこしかけ石」があった。弘法大師が腰掛けて、古城台の絶景を眺めたといわれている石だ。腰の跡、足の跡が残っているのには、笑ってしまった。まっすぐ行けば、スタート地点の作間神社へもどるが、こしかけ石から林の中を抜けて、国道まで下った。
 お約束の温泉探しの苦労も、今回は無用だ。温泉は駅のまん前である。のんびり湯につかり、下山祝いのビールとともに、帰りの電車の時間を待った。
(フリーライター/小暮 淳)





●参考歩行時間:小野上温泉駅ー(約25分)ー登山口ー(約45分)ー山頂展望台ー(約45分)ーむしば神ー(約30分)ー温泉センター