2010年02月05日

公共交通機関で里山をゆくvol.16 庚申山(こうしんやま)

2010/2/5号ちいきしんぶん掲載

駅から手軽に歩けるぐんま百名山
「庚申山(こうしんやま)」標高189m(藤岡市)





 藤岡市民の憩いの場として親しまれている「庚申山総合公園」。遊園地や動物園、スポーツ施設などが整備されているが、マイカーで遊びに行ったことはあっても、駅から山頂を目指す人は少ない。ゆっくり時間をかけて、一度は歩いてみたい里山コースだ。


 登山口まで朝の街を散歩する

 JR八高線、群馬藤岡駅に降り立つのは、このシリーズで4回目となる。そして毎回、駅前からバスに乗り換えていた。今回もバス路線はあるが、登山口のある「庚申山総合公園」までは大した距離ではない。バスの時間を待たずに、そのまま駅前通りを歩き出した。
 時間はまだ午前10時前、商店主たちが店頭の掃除や開店の準備をする姿を横目で眺めながら、朝の街を通り抜ける。途中、諏訪神社に立ち寄ると、境内でダルマや正月飾りをお焚き上げする光景に出合った。思えば、今年最初の里山ハイクである。今年一年の山行の無事を祈願して、お参りをした。
 国道254号へ出て西へ。墓地の下を抜ける「藤の丘トンネル」をくぐる。歩いて通るのは初めてだが、トンネル内は明るく、歩道も広く、とても歩きやすい。やがて、公園の玄関口となる文化施設「みかぼみらい館」に着いた。トイレを借りたり、パンフレットを入手するのに便利である。
 駐車場の奥から数分のところに、上毛かるたで馴染みの和算の大家「関孝和先生」の墓があるというので行ってみた。するとそこは、先ほどくぐったトンネルの上の墓地だった。まさか墓の下を車が往来するようになるとは、さぞかし孝和先生も驚かれていることだろう。



 武州の山々を眺める尾根歩き

 庚申山の山頂へは、いくつかのルートがある。公園内を抜けて、男坂、女坂と呼ばれる石段で直登するのが一般的だが、今回は愛宕山—さくら山とつづく稜線沿いを歩くことにした。登山口は、テニスコートや多目的広場を過ぎた市民体育館の脇から始まる。わずか数分で尾根へ出た。藤岡市の市の花「藤」にちなんだ藤棚が、尾根道に続いている。花どきは、さぞかし見事だろう。
 さくら山(163m)山頂手前で、展望台のある広場に出た。まだ子供たちが小さかった頃、家族で遊んだ記憶がよみがえってきた。あの頃は、てっきりここが庚申山だとばかり思い込んでいたことに、この日初めて気がついた。


 さくら山の尾根から東へ下り、民家と畑の脇を抜ける。突如として東南の景色が開け、神流川をはさんで、鬼石の町と埼玉県側の山並みを見渡す絶景パノラマが広がった。かつて訪ねた御嶽山や桜山が望め、しばしカメラマン氏と思い出話に花が咲いた。
 庚申山山頂へは、いったん車道を横切り、女坂をひと登り。あずま屋や展望台、トイレが整備された広場に、「ぐんま百名山 庚申山」と書かれた山名板が誇らしげに立っていた。



 里山はアプローチが楽しい

 展望台の上層からは上毛三山をはじめ、北西の山々が見渡せた。上越国境の山は、雪雲に覆われている。吹きすさぶ空っ風に冷えきった体を、今回もカメラマン氏が作ってくれた焼酎のお湯割りが、腹の底から温めてくれた。
 庚申山の標高は200メートルに満たない、ファミリーで手軽に登れる里山だ。それでもピークに立つ喜びはあり、それなりに満足感もある。里山の魅力は、標高の高低ではなく、駅や町からのアプローチの楽しさにある。本音を言ってしまえば、帰りの運転を気にすることなく、山頂で好きな酒が飲めるからなのだが……。

 
さて、山頂で祝杯をあげれば、残るお約束は一つ。温泉だ!
 女坂をもどり、車道を南へ下ることにした。目指すは鮎川温泉「金井の湯」。吹きっさらしの田んぼ道を西へ西へと歩いた。バス通りへ出たら南下、最寄りの停留所「金井郵便局前」を探し、帰りのバス時間をチェック(本数が少ないので要注意)してから、温泉へ向かった。


 このシリーズも4年目に入った。群馬県内には、まだまだ登ってみたい里山がたくさんある。湯上がりに今度は、今年のスタートを祝してジョッキを掲げた。
(フリーライター/小暮 淳)